1 長谷川テルの奈良女子高師時代についての調査 (1)初期作品の検証 奈良女子高師の同窓会雑誌に掲載されたとされる初期作品について、既存研究では存在の指摘はあるものの具体的な検証が成されていない為、作品収集及び分析を行った。抽出した詩的な叙情性が後の中国での「報告文学」にも流れている点を今後検証していきたい。 (2)奈良女子高師退学の経緯 退学がどのような経緯によるものか、学校側の事情を知るべく、当時の会議録を丹念に調査した。結果は、退学決定のみのごく簡単な記載のみであり、そこに逆に「危険思想」に対する弾圧を読み取った。これをふまえ、今後、警察資料、新聞報道を調査する予定。 2 長谷川テルの中国での活動についての調査 (1)晩年の編集雑誌「抗戦文芸」の調査 既存研究では存在のみの指摘で言及のなかった「子猫的死」を重慶図書館にて発見することができた。翻訳・考察の結果、終末期の心象を投影する作品と結論した。今後は同誌掲載の未発見作品を引き続き探索・収集していきたい。 (2)北京・上海・重慶・香港での活動跡の実地踏査 各地の抗日戦争に関する箇所や資料館を訪れ、作品の背景を際に肌で感じることができた。中でも、長谷川テルが居住した重慶郊外の辺鄙な金剛村を訪れ、郭沫若らの抗日組織の活動跡を見学できたことは有益であった。 3 長谷川テル研究と抗日戦争についての文献調査 長谷川テルと抗日戦争についての研究文献収集と読解を行った。古本での入手も困難なため収集に苦労したが、継続して行ってゆきたい。
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