今年度は引き続き中国抗日民族解放運動に関する資料収集に努めた。 また、9月にテルが晩年に渡った中国東北部に赴き、実地踏査を行い、作品の風土と背景を肌で感じることができた。ジャムスに行き、テルの墓参ができたことは特筆すべきことであろう。墓前で研究の成果と日中国交の改善を誓った。ジャムス図書館では、日本、中国の他都市では手に入らない、テルに関する資料等を見つけることができた。今後論文にまとめる上で、有効な資料となると確信する。また、牡丹江、ハルピンでも、記念館、博物館、図書館を訪れたが、以前の訪問と比較して、抗日戦争関係資料が充実し、見ごたえがあった。新しく知る事実も多かった。大陸の風土もこの目で確かめることができ、作品理解のための多大な助けとなった。 帰国後、収集した資料を整理し、専門家に翻訳を依頼。少々手間取ったが、現在はそれを読解、昨年度に収集した資料とあわせて、最終年度の報告書にまとめるための準備をしている。 今年度の研究成果としては、テルが上海に上陸し、そこで見聞きし、感じたことがいかにリベラルなエスペラントとしての感性に基づいたものであったかを、他の文学者たちの上海体験と比較した。同時にエスペランチストとしての限界と苦悩も抽出し、論文としてまとめた(「中国民族解放運動と長谷川テル-『戦う中国で』論-)。これまでの成果は2006年夏の中国での日中研究者による学会にも発表予定である。
|