本研究は、元の至元年間(1264〜1294)に編纂された『至元訳語』をはじめとして、明の洪武22年(1389)の序をもつ『華夷訳語』(いわゆる甲種本)、さらに後の時代に編纂された「韃靼館訳語」(乙種本『華夷訳語』とその増補、および丙種本『華夷訳語』)、また『登壇必究』所収の『北虜訳語』、『虚龍塞略』所収語彙等々の「漢蒙対訳語彙集」を研究対象として、(1)それらの書誌学的な情報を整理した上で異本資料の校訂作業を行うとともに、(2)モンゴル語史の観点からそれぞれの語彙集に収録されたモンゴル語の音声的、意味的な特徴を明らかにし、(3)それらを互いに比較することによってモンゴル語の語彙の変遷を明らかにすることを目的としている。 平成16年度の研究としては、『至元訳語』と『華夷訳語』(甲種、乙種、丙種)について漢語、漢字表記モンゴル語、およびローマ字転写モンゴル語のデータを計算機に入力しつつ、その校正と本文の校訂作業を並行して行った。入力したデータを元に、それぞれの語彙集の「漢語索引」「漢字表記モンゴル語索引」「ローマ字転写モンゴル語索引」を作成し、さらにそれらを統合して異同の比較ができるような「漢語索引」と「モンゴル語索引」を製作する作業を進めている。 平成16年8月には、中国第一歴史档案館と内蒙古大学への調査旅行を行ない、資料と情報を収集するとともに、内蒙古大学で開催された第4回内蒙古大学蒙古学国際学術討論会に参加して成果の一部を発表した。
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