研究課題/領域番号 |
16520234
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
守屋 哲治 金沢大学, 教育学部, 助教授 (40220090)
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研究分担者 |
堀江 薫 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (70181526)
姜 奉植 岩手県立大学, 総合政策学部, 教授 (30305320)
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キーワード | モダリティ / 文法化 / 日本語 / 韓国語 / 認知言語学 / 機能言語学 / 否定辞 |
研究概要 |
本年度は、日本語および韓国語に関するモダリティ表現の発達の平行性に関する研究、および否定表現の発達に関する相違点とその原因についての考察を中心とした研究を発表した。また日本語と韓国語の文法化に関する全体的な考察を行った。2005年7月に韓国・ソウルで開催された国際認知言語学会での口頭発表では以下のような点を指摘した: (1)日本語のモダリティ表現は古代は助動詞中心であり、中世以降複合動詞的表現が発達してきた。また、deonticからepistemicへの発達の方向性も見られない。韓国語においても同じような複合動詞的表現が発達しており、かつdeonticとepistemicは日本語と同様、基本的に別表現である。 (2)このようにモダリティ表現の発達に関して日本語と韓国語が平行性を見せる背景には、両言語とも「なる」的言語であること、および複合動詞表現を用いやすいという言語的環境が共通していることが原因になっていると考えられる。 否定表現の発達に関しては、守屋・堀江(2006)で以下の点を指摘した: (1)韓国語の否定辞の発達はJespersen's cycleのような発達経路をたどっていると考えられるのに対して、日本語の否定辞は一貫して動詞に後置されている助動詞であり、この点で両言語は食い違いを見せる。 (2)このような食い違いが生じている原因は、韓国語の否定辞が副詞であって語順的な制約を受けにくいのに対して、日本語の否定辞が助動詞であって語順的制約がきついことが原因であると考えられる。 (3)このことから、概念的動機付けを持つJespersen's cycle の実際の実現は文法的な要因によって制約を受けるということが言える。 今年度の研究では、日本語と韓国語で文法化の平行性が見られるケースと違いが現れるケースを見ることにより、どのような要因が平行性や相違性を産む原因になるのかについての手がかりが得られた。
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