研究課題
本年度は、能力の否定を表す形態素の持つ類型論的特徴に関する研究、および継続相をあらわす副詞の意味変化を支配する要因に関する研究を中心として研究活動を行った。前者の研究については2006年7月にメキシコで開催されたInternational Conference on Korean Linguisticsで発表を行い、Moriya and Horie(2006)として論文発表した。また、後者に関しては守屋(2007)の形で発表した。さらに、日本語・韓国語・英語の助動詞の特性比較に基づいて、日本語モダリティ表現が持つ、特殊性と一般性を整理した内容を、2006年6月にイギリス・ロンドン大学で開催されたRevisiting Japanese Modalityという学会で発表した。能力の否定形態素の研究については、Moriya and Horie(2006)で以下のような指摘を行った。(1)韓国語に能力否定を表す形態素mosが存在するのは、アルタイ語族の持つ特徴の反映の可能性がある。(2)しかし、この形態素が持つ統語的特徴は、各言語において否定辞がどのように発達してきているか、迂言的表現がその言語でどの程度利用されているか、などといった要因によって決まってくる。また、継続相を表す副詞の意味変化の研究については以下のような指摘を行った。(1)英語stillと日本語「まだ」は意味的に類似しているが、基本的意味が異なるために拡張パターンも異なっている。(2)韓国語、ドイツ語などのデータも考慮にいれると、この基本的意味の違いは、副詞の元となる語の意味的性質に由来する可能性がある。上記で述べた研究業績において、語彙・文法構造の意味変化に個別言語的な差異を生み出す要因と、普遍的な要因が相互作用している事例を明らかにすることができた。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
金沢大学教育学部紀要、人文科学・社会科学編 第56号
ページ: 1-12
Inquiries into Korean Linguistics II
ページ: 35-42
ページ: 27-34
Vance,Timothy(ed.),Japanese/Korean Linguistics 14
ページ: 321-330