研究課題
基盤研究(C)
本研究は、日本語と韓国語を中心に文法・語彙構造の歴史変化の方向性に関わる法則性を明らかにすることを目的としたが、主として法助動詞、否定、継続相の副詞に関して研究成果を挙げた。法助動詞については次の点が明らかになった:(1)英語および関連したヨーロッパの言語の法助動詞の発達ではdconticの意味からepistemicの意味が派生したと考えられているが、日本語の法助動詞にはそのような発達経路は当てはまらない。韓国語も日本語と同様である。(2)英語と日本語や韓国語との発達経路の違いを生む要因は、法助動詞の元となる語の品詞的意味特徴に依存する。また、日本語と英語は表面的には異なる発達経路を辿るが、主観化などの共通の意味変化も観察される。このことは、文法化がいくつかの意味変化の複合したプロセスであることを示唆する。また、日本語と韓国語の並行性に関しては文化類型論的要因が関与している可能性を指摘した。否定の発達に関しては、日韓対照を中心とした。韓国語の文否定辞が,Jespersen's Cycleに沿った発達をしていると考えられるのに対して、日本語は一貫して助動詞として動詞に後置されている。このような違いは韓国語の否定辞が語順の制約が緩い副詞起源であるのに対して、日本語の場合は語順の制約がきつい助動詞であることが原因と考えられる。Jespersen's Cycleのような機能的動機付けも、個別言語の要因、特に元となる語の範疇によって適用が制限されることを主張した。継続相の副詞に関しては、英語stillと日本語「まだ」は意味的に類似しているが、意味拡張のパターンが異なることを指摘し、この違いは基本的意味の違いから由来すること、さらにそのような違いは当該の副詞だけに関与するのではなく、英語、日本語、韓国語、ドイツ語などの継続相の副詞には全体に当てはまる、一般性の高い法則であることを示した。
すべて 2007 2006 2005 2004
すべて 雑誌論文 (16件) 図書 (1件)
金沢大学教育学部紀要、人文科学・社会科学編 第56号
ページ: 1-12
Kanazawadaigaku Kyoikugakubu Kiyo, Jinbun-Kagaku, Shakai-Kagaku Hen ( The Bulletin of the Faculty of Education, Kanazawa University, Humanities ' and Social Sciences) 56
ページ: 1.12
言語処理学会第12回年次大会論文集
ページ: 885-888
Wiiliam O'Grady et al. ed. Inquries into Korean Linguistics II (Thaehaksa)
ページ: 35-42
ページ: 27-34
Gengo Shorigakkai Dal 12 Kai Happyo Ronbunshu (Proceedings of The Twelfth Annual Meeting of The Association for Natural Language Processing)
Inquiries into Korean Linguistics LI, Seoul : Thaehaksa
Inquiries into Korean Linguistics if, Seoul : Thaehaksa
日本語の研究 1巻・3号
ページ: 93-106
Nihongo no Kenkyu (Studies on Japanese) 1・3
認知文法論II(大修館書店)(中村芳久編)
ページ: 247-278
対照言語学の新展開(佐藤滋・堀江薫・中村渉編)(ひつじ書房)
ページ: 319-331
Sang-Oak Lee et al. ed. Inquiries into Korean Linguistics I (Thachaksa)
ページ: 67-76
Yoshihisa Nakamura ed. Ninchibunpo Ron if (Cognitive Linguistics II), Tokyo : Taishukan
ページ: 247-274
Shigeru Sato, Kaoru Hone, Wataru Nakamura ed. Taisho Gengogaku no Shintenkai (New Developments in Contrastive Linguistics), Tokyo : Hituzi Shobo
ページ: 319-31
Sang-0ak Lee et al. ed. Inquiries into Korean Linguistics I, Seoul : Thaehaksa