研究課題
基盤研究(C)
本課題では、『過ぎし年月の物語』を初めとする中世ロシアの年代記、『キリル伝』『メトディオス伝』を中心とする古教会スラブ語時代に成立した聖者伝、『ボリス・グレブ伝』を初めとするロシアの聖者伝を主たる対象に、中世スラブ語のさまざまな文献中に現れる聖書本文からの引用について、中世スラブ世界の著作家たちがその著作活動に当たって聖書をどのように読み、どのように利用したかということを明らかにすることを目指して、総合的な研究を行った。その際、従来欧米の研究者が目指して来た、それぞれの引用に際して利用されたスラブ語訳の原テクストを確定するという文献学的目標に加え、引用者が取る「省略」「異なる部分の結合」「付加」「動詞や名詞の人称や数を変えることによる読み手への訴えかけ」といった様々な手段を分析して類型化することを試みた。これにより各文献の特徴、さらにはそれぞれの著作家の特徴を明らかにすることが可能になる。また古教会スラブ語のカノンとしての福音書、詩篇だけでなく、その周辺にある使徒書簡や旧訳聖書の本文をも分析の対象に加えたことも本研究の特徴である。さらに最終年度には、それまでの作業・考察にもとづいて、聖書引用という視点を越え、古教会スラブ語福音書、南スラブ系の聖者伝『キリル伝』『メトディオス伝』の言語がロシア年代記『過ぎし年月の物語』の言語に対してどのような影響を与えたかという観点から分析を行った。これは、今後のより広い文脈でのスラブ文章語の歴史的研究につながるものである。
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(Gracuate School of Letters, Kyoto University.) vol.411