研究概要 |
本年度は本研究の3年目にあたるが,主にダイクシスが関与するいくつかの言語現象の考察をおこなった。具体的な研究実績の概要は以下のとおりである。 1)第一は,人間が時間の流れをどのように把握しているかが,時間表現にどのように反映しているかの考察である。一般に,the time will comeのように時が移動すると把握する場合と,be going toのように人間が移動すると把握される場合があることはよく知られている。しかし,時間の移動という観点からは,前者の場合には時間は未来から過去に移動していることが顕在的に現れているが,後者の場合であっても,人間が過去から未来に移動するということは,人間を固定して考えれば,時間は未来から過去に移動していることになる。結局,どちらの場合にも時間は未来から過去に移動していることになるのである。このような問題意識から考察をおこなったが,成果は,日本語を考察対象とした論文として,「言語における時空をめぐってIV 言語文化共同プロジェクト2005」所収の「時間把握と時間表現」という論文として公表されている. 2)第二は,フィクションにおける自由間接話法の問題である。自由間接話法は,一方で地の文,他方で自由直接話法との違いが問題になることが多いが,そもそも,フィクションの構成要素にはどのようなものがあり,どのように分類されるのであろうか。このような問題意識から考察をおこなったが,その成果は,日本語を考察対象とした論文として,「大阪大学言語文化研究33」所収の「日本語フィクションにおける自由間接話法」(現在,印刷中)という論文として公表される予定である。 なお,18年10月30日から11月8日にかけてはドイツ,ボーフム大学に出張し,Harweg名誉教授,Schlak准教授と個人的に会う機会を持ち,関連する多くの点に関して様々な貴重な意見を伺った。
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