研究概要 |
これまで数年にわたる研究テーマは、科学研究助成費の研究テーマに合わせて、幼児の音韻の獲得と成人の(脳障害などに起因する)音韻の喪失(あるいはリハビリテーションによる再獲得)のプロセスの差異を明らかにし、普遍性に迫ろうとするものであった。喪失に関しては、純然たる構音に問題がある失語症患者が、昨年度もほとんど見つからなかったので、さしたる進捗は見ていない。 獲得に関しては、音韻獲得の説明で用いられる「制約」という概念をもう一度再確認し、最適性理論の「制約」と、音韻規則と併用されていた時代の制約の違いを、獲得という点から再検討した(「「派生時代」の音韻獲得制約再考」『言外と言内の交流分野』(大学書林))。またクロアチア共和国で開催されたInternational Clinical Phonetics & Linguistics Associationの大会において、音韻獲得に関するセッションの座長を務めた。さらに、幼児の構音障害については、これまで長年の研究蓄積があるが、McLeod, S. (ed.) International Guide to Speech Acquisitionのなかの一章"Japanese Acquisition"を共同執筆し、これが近日中に、Thomson Delmar Learning社から出版される予定である。次年度は、これに準拠して、さらに研究を進めていく。 また関連したトピックである、成人の第2言語における外国語訛りに関しては、3月に台湾で開催されたLinguistic Symposiumで基調講演をおこなった。
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