研究課題
基盤研究(C)
本研究は、現代言語学の音韻論の立場に立って、人間の音韻獲得と音韻喪失の間の平行性と、それに関係するいくつかの問題を明らかにしようとしたものである。より具体的には、正常発達児と機能性構音障害をもつ幼児の音韻体系と、失語症などで音韻を喪失した成人の音韻体系を比較・対照することにより、前者の獲得のプロセスと、後者の喪失の状態、そしてリハビリテーションを受けた場合の再獲得のプロセスには、関連性が見られ、それを分析することにより、人間の音韻獲得のメカニズムに新たな角度から迫ることを目指したものである。幼児の音韻獲得に関しては、平成10-12年度「スピーチセラピスト用言語障害児音韻体系分析マニュアルの開発」および平成13-15年度「幼児の音韻障害の言語学に基づく臨床分析方法の確立」(両者とも基盤研究(C))の延長線上にあり、分節音の獲得順序についてさらに研究を深めることができ、また研究対象をプロソディーにも広げることができた。これらの成果は、個別の論文や国際学会での発表に反映されている。またこれらの研究成果を活かし、啓蒙的な業績として、アメリカ合衆国から出版された音韻獲得・障害のハンドブックの1章を担当し、日本語の音韻獲得と障害に関して、読者に鳥瞰図を与えることができるチャプターを執筆した。しかしながら、音韻喪失に関しては、大阪府内のリハビリテーション病院のご協力を得て、失語症患者のデータを相当数採取したものの、純然たる音韻だけの障害はほとんど無く、今後に課題を残すことになった。これを含め、音韻獲得や障害の分野は、研究者も少なく、まだまだ未解決の問題も多いので、幸いにも今年度交付内定をいただいた、「音韻障害と外国語訛りの平行性に関する言語学的研究」において、継続して取り組んでいく予定である。
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