今年度は8月半ばから末にかけて秋田、青森にフィールド調査を行った。秋田は阿仁マタギを、青森は目屋マタギを中心にその語彙・意味を収集した。具体的には阿仁町比立内に住む松橋時幸さんにお願いしていたが、インタビューの何日か前に体調を崩し入院されたので、急遽最もマタギ歴の長くマタギ語彙に長けている同比立内の佐藤勝次郎さんにお願いした。そのほかに直接その語彙と関連するマタギの文化財を撮影収録した。また予定通りに阿二町のマタギ資料館を訪ね、秋田全体のマタギの状況も把握した。 今回は急遽佐藤さんにお願いしたため、語彙を詳しく調査することができなかった。そのため。来年度もう一度訪ね、詳しく語彙調査する予定である。 また青森では西津軽郡西目屋村の工藤光治さんにお願いし、インタビューをして目屋マタギ語彙や30年程前のマタギについて話して頂いた。工藤さんには語彙調査をしたが、今回アクセントまでは語彙記述に十分反映させることができなかった。そのため、来年度も工藤さんを訪ねる予定である。 現在収録した語のデータベース化を推し進めており、これまで収録した語彙に関しては入力し終わるところである。またこの収録したものを基盤にマタギ語彙の特徴を論文として執筆しているところである。 今回の語彙調査でわかったことはマタギと称している人でもマタギ語彙や儀礼など詳細にわたって知っている人はまれであり、「マタギの里」として知られる阿仁町比立内においてさえも松橋さんと佐藤さんの2名しかおらず、また西目屋村でも工藤さんが1人しかいないのが現状であった。従って、来年度計画している岩手のマタギに関しては著名なマタギがいないことからあまり岩手のマタギ語彙は期待が持てないかもしれないが、フィールド調査を行う予定である。
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