平成16年度は主に東京方言と北部九州方言の形態統語的相違を英語との比較において研究、平成17年度はそれを発展させ、朝鮮語の連用形および-ko iss-ta形によって表現される相も比較対象に加えた。その結果、日本語(東京方言・北部九州方言)においては相の形態的実現として表される意味が、朝鮮語においては時制のそれによって担われている部分があることが明確となってきた。 この傾向は、日本語学におけるテンス・アスペクト・モダリティ研究において、工藤真由美氏などが東北方言・琉球方言などを射程に入れた研究プロジェクトの中で明らかにしつつある主張とも合致する。 平成18年度は日本英語学会などの学会参加や研究打合せ、朝鮮語母語話者への聴取などから、達成動詞(例「結婚する」)の結果残存アスペクトについて、東京方言では「テイル」、北部九州方言では「トウ」を用いるのに対し、朝鮮語は過去時制にも用いられる-ess-taを用いるという大きな相違を明らかにした。また、前述の東北方言・琉球方言にみられる証拠性(evidentiality)標識と時制標識の相関についても興味深い発見を行った。 それらの発見に基づき、平成19年8月にHarvard University(アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ市)で開催されるThe 12^<th>(2007)Harvard International Symposium on Korean Linguisticsにおいて"Conspiracy of Aspect and Tense:Division of Labor in relation with Existence of Evidentiality markers"を発表、Harvard Studies in Korean Linguistics XIIに掲載された。
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