平成16年度は、英語母語話者同士の自然談話のスクリプト上において分析対象変数使用例をマーキングする作業を完了し、その後、分析対象変数の音声分析に一部着手した。音声分析の終了したデーダに関しては、分析結果と使用例それぞれの言語内要因をコード化し、統計分析用ソフトウエアへの入力を開始した。さらに言語外的な要因、すなわち、話者の社会的情報、話者の職場やつきあいの場での言語使用状況や交友関係に関するアンケート結果、また話者のソーシャルネットワークのスコア等もコード化・数値化し、言語内要因とともに統計ソフトへの入力を行った。 データ分析とデータ入力は現在も継続中であるが、入力済みの一部のデータを統計処理し、来日直後とその1年後に同一話者から収集した会話のデータを比較した結果、2回目の会話中に、(1)他の英語圏特有の発音的特徴を取り入れる;(2)子音連鎖の単純化の割合が低下する;(3)より多くの日本語表現を挿入する、などの変化が観察された。さらに、上記(1)-(3)で観察された変化の程度は、各話者のソーシャルネットワークの関与が示唆される結果が得られた。 この中間的結果を携えて3月に渡英し、イギリスの研究機関にて社会言語学、統計、音声の専門家らと複数回にわたって面談し、方法論等の検討・確認を行った上で、今後の研究に必要な資料・情報収集を行った。 単語読み上げデータに関しては音声分析・統計処理を終え、来日一年後に特に顕著な変化が観察された子音連鎖の単純化についての研究結果を、北九州市立大学外国語学部紀要に掲載し報告した。
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