研究概要 |
大角翠(研究代表者)は平成16年7月30日から9月13日にニューカレドニア本島中南部、ワウェ部落に滞在しネク語の調査を行った。現地では、ルイ・ウインベを中心に、音韻、語彙の収集、会話、ナレーションの録音等を行い、また、隣接するオロウィン語の調査やヌメアでの国際セミナーにも参加した。チバウ・カナク文化センターが中心に進めているニューカレドニア先住民語の辞書作成に立ち会ったが、消滅の危機に瀕する言語を記録する緊急性を鑑みても、短期間に非専門家が行う辞書の編纂は問題を多く含んでいるとの印象を持った。 ヌメアでは、領土全般の言語資料の調査、収集を引き続き行い、ド・ラ・フォンティネル教授他の研究者と意見交換を行った。A・オレロ氏はティンリン語の辞書項目のチェック、及びアンケート調査の協力を行った。 ネク語は話者数が221人(1996年統計)と極めて少ない言語であり、先行記録はほとんどない。話者が存命するうちにできるかぎりの調査と記録の必要が迫られている。平成13、14年に大角がワウェで収集したネク語の基礎語彙とテキストは、分析,編集したのち、『環南太平洋の言語』第2号と第3号の中で発表した。 ティンリン語とネク語は隣接した地域で話されているにも拘わらず、語彙、音韻、文法面のすべてにわたり非常に異なっており、比較言語学的にも興味深いものである。現在ネク語については語彙集の制作、テキストの文字化、文法分析を続けており、ティンリン語については文法、辞書の両方で、ブケーの協力のもと仏語訳を準備中である。 周辺地域の言語調査は、大西正幸がブーゲンヴィル島のブイン、ナゴヴィシ語、内藤真帆がバヌアツのツツバ島語、千家愛子がバラサフ語、佐藤寛子が西ニューブリテン島のコーベ語のフィールド調査を行った。それぞれ言語学会、オセアニア学会、太平洋学会等で発表した。
|