研究概要 |
カタカナ化された英語からの借用語を見ると、knock(ノック)とknob(ノブ)のように、よく似た音連鎖が、ある場合には促音をもち、ある場合には促音なしでカタカナ化される。本研究は入力の英語音声に、どのような音声学的な特徴があれば促音が聞こえるのかを解明する。/tek/,/tekt/,/teks/,/tekl/,/tekin/,/teg/,/teb/,/teklin/,/tektin/という英語風の無意味語の音声データを採取し、これを用いて、3回にわたり日本語話者(延べ140名)による促音の知覚実験を行った。この結果を音声データの時間的側面の計測結果と対比し、促音知覚率の高いテスト項目と低いテスト項目を峻別する時間要因を検討した。 この結果、従来、英語音声における促音知覚の要因として主張されてきた当該子音長と直前の母音長の比率は、英語音声における促音知覚の要因として不十分であることが証明された。促音知覚の有無と相関が高い時間要因としては、単語長をもとにした拍数計算と当該子音長と単語長の比率の2つの要因の可能性が高いことを示した。Hirata&Whiton(2005:JASA118(3)1647-1660)は、言語にはある範疇に対応する音響的特徴に「相対的定性」があると論じ、日本語の促音生成の場合、子音の閉鎖時間長と単語長の比率が発話速度変化の影響を受けないことから、これを促音の「相対的定性」とした。英語音声の知覚ではこれと同様の場合もあり、また、単語長をもとに拍数で計算される場合があることになる。
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