最終年度である平成18年度は、昨年度に引き続き、本研究代表者笹間・研究分担者渡辺がこれまで研究をおこなってきた海岸ツィムシアン語とスライアモン語のクリティックの形式的(クリティックと語根・接辞・重複部との位置関係、クリティックどうしの位置関係、ホストの選択、節における位置、アクセントやポーズの有無など)・意味機能的特徴について記述をすすめるとともに、日本語や、文献資料や他言語研究者から情報を得た北アメリカ先住民諸語をはじめとするさまざまな言語にみられるクリティックにも目を向けた。 夏期には、昨年度同様、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州において、2/3-2ヶ月ほどの現地調査をおこない、海岸ツィムシアン語・スライアモン語のクリティックにかんするさらなるデータを収集した。 年度前半と年度末には東京と大阪にて研究打ち合わせをおこない、それぞれが研究対象とする言語のクリティックの諸性質と分析上の問題点、文献資料等から情報を得たその他の言語のクリティックにみられる諸性質について情報を交換するとともに、報告書のとりまとめについて討議した。現在、クリティックにかんする論考およびクリティックについての注釈を含む自由発話によるテキストを含む報告書の刊行に向け、作業をすすめているところである。これまでヨーロッパの言語にかんしておこなわれることが多かったクリティック研究に、クリティックのより多様な姿が示されよう。
|