本研究は、日本語史研究の一環としての訓点資料・訓点語研究のための基礎資料として、「訓点資料総目録 平安時代編」を極めて近い将来に作成することを念頭に置き、そのための準備としてこの目録がどのような形式、内容のものであるべきか、訓点資料目録のあるべき姿を検討し、そのために実際に小規模の目録を作成して目録編纂の方法論を考察するものである。このために次のような考察、作業を実施した。 1 「訓点資料総目録 平安時代編」のあるべき姿の検討 従来の各種の訓点資料目録の問題点を検討した結果、単に書誌学的データを詳細に記すのみではなく、当該資料の日本語史資料としての価値や性格を一定の基準に基づいて簡潔な文章や具体的な用例と共に記述することが必要であるとの結論を得た。 2 目録を作成するための方法論の検討 A)訓点資料を日本語史の資料として見た場合の価値、意義を予め設定したいくつかの項目(文法、表記、音韻、語彙等)ごとの基準に照らして評価し、それらの評価の結果を総合して当該資料の価値を4段階程度で判定することについて、検討を実施した。また、自分が実見していない、あるいは実見することが今後とも困難な訓点資料について、他の研究者の調査結果を標準化し、実見した資料のデータと比較検討するための方法論について検討を開始した。その結果、前記の4段階程度の価値評価と同等のものをこれらの資料についても近似的に実施することが可能であるとの見通しを得た。 B)これは実際に小規模な目録を作成してその過程で種々の問題点を検討することであるが、このために真言宗関係の典籍について、小規模な目録を作成するためのデータ収集を実施した。具体的には出張による原本調査の他、他の研究者の調査報告のデータ収集、各種訓点資料目録からのデータ収集を行い、その上でそれら各種のデータを1つにまとめてどのように処理するか、検討した。
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