研究課題
基盤研究(C)
本研究は、中世仮名法語のなかでも、とりわけ質量ともにもっとも優れた『正法眼藏』を対象に、その文体と中国語口語との関わりを示すと思われる文体指標を抽出し、その受容過程を明らかにした。主な文体指標は次のとおりである。一、複合動詞後項に用いられる「〜キタル」。二、「〜スルコト+数量表現」。三、「〜底(ノ)+名詞」の表現。上記三つの文体指標のうち、一の「〜キタル」については、平安時代の訓点資料、日本漢文、和漢混淆文などとの比較を通じて、当該用法は平安時代に於ては限られたものであったが、『正法眼藏』においてその用法がほぼ宋代の中国語口語における「〜來」と完全に重なり、その著しい影響が認められることになったこと、二の「〜スルコト+数量表現」の受容については、この用法は平安時代の訓点資料にも現れているが、その訓法は変化に乏しく、用例もそれほど多くなかった。一方、『正法眼藏』における当該用法が多種多様にわたり、道元禅師はさまざまな表現を工夫することによってそれを和漢混淆文の中に積極的に取り入れようとする姿勢が認められること、三の「〜底(ノ)+名詞」の表現については、この表現の最初の受容は『正法眼藏』に見られること、他の宗派の文献や同じ禅宗のなかでも仮名法語の文体の違いによってかかる用法が認められないこと、近世、近代にもこの表現が受け継がれつつ、一般化したこと、を明らかにした。そして、以上の三つの文体指標を通じて、中国語口語語法の受容は独り禅宗、とりわけ曹洞宗においてもっとも活発であり、積極的であったことを論じた。
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Dynamis,(京都大学大学院人間・環境学研究科デュナミス編集委員会) VOL. 10
ページ: 121-135
Dynamis (Department of Language Activities in Cultural Environments Graduate School of Human and Environmental Studies Kyoto University), Academic Journal,2006 Vol. 10
Dynamis,(京都大学大学院人間・環境学研究科文化環境言語基礎論講座) VOL.8
ページ: 162-177
Dynamis (Department of Language Activities in Cultural Environments Graduate School of Human and Environmental Studies Kyoto University), Academic Journal,2004 Vol. 8
The Proceedings of2006International Symposium in Peking University (in the press)