研究課題
基盤研究(C)
本研究では、現代の若者の間で広がりつつあるとされる日本語のピッチ平坦化現象について調査を行った。ピッチの平坦化が日本全国で進行しつっある「共通語化」の一側面であるという前提のもと、韻律上大きな隔たりのある北海道方言と鹿児島方言話者(それぞれ若年層・老年層の二グループ)を被験者にした大規模な実地調査を行った。また、従来の韻律研究では常識とされる単独語彙や単独文の読み上げタスクから得られる音声資料の限界を指摘し、話者の日常生活により近いレジスターの積極的使用を提言すると同時に、ニュース文の朗読音声や絵描写のナラティブなど複数のレジスターから当該変項の分析を試みた。さらには、社会音声学の理論的枠組みと音声合成を活用し、ピッチの平坦化を母語話者がどのように知覚するのかという当該変項の社会的意味(指標性)を探る知覚実験も試みた。調査の結果、単独文の読み上げ、ニュース原稿の読み上げ、絵描写のナラティブなど三つのレジスターから得られた音声において、若年層話者と老年層話者の間に、ピッチの平坦化の証拠となるピッチの漸次的下降(declination)およびアクセント句ピッチの上昇などにおける統計学的有意差が確認された。また、音声合成を用いた「変装組み合わせテクニック」(Matched-guise technique)の使用により、母語話者は、同一話者の同一音声であっても平坦なピッチをより若い話者年齢と結びつけることが判明した。これらの結果をとりまとめ、現在、報告書を英語で執筆中である。また、広く海外の研究者にも我々の研究成果を知ってもらうため、英語で論考を準備し、国際的な学術雑誌に投稿を予定している。
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社会言語科学会・第18回大会発表論文集
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Proceedings of the 14thMeeting of the Japanese Association of Sociolinguistic Sciences
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