今年度は、文字の平面配置について、A.他の文字との配置関係 B.他の平面図形との配置関係 C.画面との配置関係の3点から、調査をおこなった。 Aについては、本文と有機的な関連を持つものの、別に配置される、文字言語独特のメタ・テキスト(見出し、ヘッダー、目次など)について、その発生と展開について、明治・大正期の新聞・雑誌を精査し、それらが直接欧米の模倣ではなく、日本独自に展開を見たことを明らかにした。また、明治期・大正期の新聞記事の組み方の変化(紙面における配置法)が、「帯組み」→「島組み」→「ブロック組み」という、平面性を有効利用する方向で順次展開してきたことを明らかにした。 Bについては、平面図形にも文字同様の時間的展開のある、マンガと絵双六をとりあげ、それぞれ、日本マンガの海外版と、近代以降の絵双六とについて、文字列展開の方向との関係の調査をおこなって、マンガや双六のコマ進行と文字列の展開方向に、密接な関係があることを確認した。 Cについては、文字列の画面に対する方向(「文字列配置方向」)を、奈良時代〜室町時代の荘園図、平安時代〜江戸時代の儀式関連の指図、前近代の地図について調査した。特に、江戸切絵図の文字注記については、その文字の向きが様々な機能を担っていることを実証することができた。
|