研究概要 |
研究代表者の小野は,昨年度までの研究成果に本研究の成果を追加し,『生成語彙意味論』という著作をくろしお出版より刊行した。この本は,従来単語に関する情報を蓄積するだけの機能しか与えられていなかった語彙部門に意味を動的に生み出すモデルを提案し,語彙意味論や構文論の問題を解決しようという試みである。 小野は,平成16年5月19日〜21日にスイス,ジュネーブ大学において開催された国際会議において研究成果の一部を報告した。この報告は,日本語の連体修飾節における修飾関係が英語の関係代名詞節における修飾関係とは異なるしくみによって捉えられることを示したものである。この報告はQualia and Adnominal Clauses in Japanese.としてジュネーブ大学から刊行された論集の中に収められた。 さらに小野は,平成16年11月12日に九州大学で開かれた日本英語学会全国大会でワークショップ(タイトル「結果述語の意味論」)を主宰し,みずからも「結果述語のSclalar Structure」と題する発表をおこなった。このワークショップは,本研究の中心的なテーマである事象構造の研究から得られた成果を発表したものである。結果述語の事象構造を認知類型論的な観点から検証した内容である。このワークショップでは,5名の報告者がそれぞれの研究について報告した。なお,この成果は平成18年度中にひつじ書房から論文集として出版予定である。 上原は,タイ語についての研究をおこない,認知類型論的な観点から語用論的推論と文法化が関連する問題を報告した。また,日本認知言語学会において主観的解釈と文法化についての類型論的な研究を発表した。 堀江は,「非意図的な出来事の認知類型論」と題する論文を共著で発表し,事象構造と認知類型論の接点を探った。
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