本研究プロジェクトは事象構造に認知類型論的なアプローチから分析を加えることにより、日英語における構文と事象構造の相関性についての類型論的な違いを明らかにすることを目的として計画された。特に、次の3つの仮説を検証することが本研究の中心課題であった。 (1)事象構造はいくつかの基本的な概念スキーマを元に形成される。 (2)事象構造は動詞の意味と構文のインターフェイスである。 (3)構文と事象構造の相関性には日英語間で類型的な相違がある。 研究プロジェクトの最終年度に当たる19年度は、このような課題に即してプロジェクト参加者が各々進めてきた研究を整理し、総括的に検討することをおこなった。その結果は、研究成果報告書にまとめて公表した。研究代表者である小野は、日英語の受身構文、移動・変化構文、結果構文などについて、認知類型論的な観点に基づき事象構造を用いた比較研究をおこなった。その成果は次頁にあげる論文および著書によって発表した。研究分担者の堀江と上原は、認知言語学的な視点からの類型論の研究をおこなった。特に主要なテーマのひとつとして認知言語学的な観点、あるいは機能論的な観点から「主観性」の問題を取り上げ、認知主体が事象を言語に表現する際の類型論的な相違に着目した研究を進めた。その成果の一部は、『結果構文研究の新視点』(ひつじ書房)として平成19年9月に出版した。また、研究代表者の小野は、成果発表のため平成19年5月にパリで開催された「第4回生成的アプローチによるレキシコンの研究」国際会議に出席し、研究成果の報告をおこなった。
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