研究課題
一定の統語操作や形態的操作により文中の種々の要素が統語的・語彙的・意味的タイプシフトを引き起こすことを明らかにして、この派生上の質的変化に基づいた日英語の諸現象の分析を試みた。富澤は、節が項ではなく述部として機能する関係節を取り上げ、特に、[[_α the picture of himself][_<CP>that Dan painted]]におけるhimself=Danの解釈が可能な現象と照応形を含む句の再構築化(restructuring)との関係を検討した。従来通りのexternal MergeによりαとCPを組み合わせて関係節型複合名詞句を形成すると仮定すると、従来型の再構築化現象の解決案(すなわち、照応形を含む句の移動元に着目する仕組み)では、himself=Danの解釈を正しく予測できない。本研究では、第一に(i)再構築化現象の統語的一般特性を整理した上で、(ii)上記の現象についてαとCPのマージがinternal Mergeでありうること、そして、(iii)その理由がMerge操作にラベル(label)の概念がない点にあることを検討している。丸田は、主述関係におけるタイプシフトの研究の中で、特に、レキシコンの言語学、心理学に跨る統合モデルを考察している。単語の認知過程および辞書からの取り出し、さらにはレキシコン内の貯蔵方式等についての言語理論との整合を研究している。鈴木は、英語の結果構文において観察される境界性制約をタイプシフトの一例として捉え、統語的に規定される複合述語形成において、解釈上要請される測定尺度・経路の構築という視点から、構文的一般化として導くことを試みた。関連して、make使役構文が結果構文とは体系的に異なる振る舞いを示すという事実を、軽動詞としてのmakeのアスペクトの特異性から説明し、結果構文の相対的な自立性を明らかにした。
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