本研究の目的は、スモールコーパス利用による文体論研究の方法の確立をめざすとともに、コンピュータ利用による客観的分析および文体論的分析を双方向的に行うことにより、量的・質的分析方法の融合を図り、新たな意味理論(theory of meaning)研究への道を開拓することにある。初年度にあたる16年度では、スモールコーパス利用の分析法の妥当性を検証するためのパイロット調査として、おもにルイス・キャロルのアリス作品を取り上げ、その品詞タグ付与スモールコーパスの作成作業を行うとともに、個別のアリス作品の言語的分析を深めることであった。 まず、品詞タグ付与スモールコーパスについては、すでに作成しているアリス作品のスモールコーパスに新たに品詞タグの付与作業を実施した。具体的にはAlice's Adventures in Wonderland(不思議の国のアリス)とThrough the Looking-Glass and What Alice Found There(鏡の国のアリス)の2作品の品詞タグ付与を行った。今後これらのコーパス分析の際に必要な言語処理プログラムに関係するPerlなどを利用した実技講習を、3月27日(日)に開催予定の第2回英語コーパス学会東支部研究談話会において、受講予定である。 また、アリス作品の言語的分析を深めるにあたっては、新たにDan SperberやDeirdre Wilsonらが提唱する関連性理論(Relevance Theory)を援用して、アリスと登場人物たちとの間で繰り広げられるコミュニケーションにおける失敗を対象として、認識とコミュニケーションの関係からの分析を行っている。 なお、業績発表までには至っていないが、現在コーパス関係と文体論関係の2分野において、それぞれ共著論文を執筆中であることを申し添える。
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