本研究の目的は、スモールコーパス利用による文体論研究の方法の確立をめざすとともに、コンピュータ利用による作品の客観的分析および文体論的分析を双方向的に行うことにより、量的・質的分析方法の融合を図り、新たな意味理論(theory of meaning)研究への道を開拓することにある。 2年目にあたる本年度では、7月に連合王国バーミンガム大学で開催されたCorpus Linguistics 2005のワークショップ・基調講演・研究発表・ポスター発表などに参加した。とりわけ、ワークショップCorpus Approaches to the Language of Literatureでは、コーパス言語学と文学研究のインターフェイスとしての可能性に関する議論に参加し、大いなる刺激と示唆を得た。また基調講演者のひとりであるMike Scott教授とは、WordSmithを利用した研究に関して個人的に議論をする機会を得、有益な助言のみならず、献呈した論文に対して後日書評を得ることができた。 本年度の成果としては、オックスフォード大学出版局から出版されている専門誌Literary and Linguistic Computingに共著論文"A Small-Corpus-Based Approach to Alice's Roles"が採択され、一足早く電子ジャーナル版が8月より公開されている(llc/fqi042)。また個別には、英語コーパス言語学関係として10月に「推理小説とモダリテイ」が出版され、意味理論関係として本年3月に「コミュニケーションの構図-傾きのあるyes-no疑問をめぐって-」が出版される予定である。
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