本課題研究「スモールコーパス利用による文体論と新しい意味理論の研究」の目的は、スモールコーパス利用による文体論研究の方法の確立をめざすとともに、作品をコンピュータ利用による客観的分析および文体論的分析を双方向的に行って、量的・質的分析方法の融合を図り、新たな意味理論(theory of meaning)研究への道を開拓することにある。 具体的には、論理学・統語論・意味論・語用論・文体論・語法・談話分析・コミュニケーション論・認知言語学等の知見を利用した広範な意味理論からの作品分析を、使用されていることばに焦点をあてて行うとともに、ツールとしてコンピュータを利用することで遺漏無くデータを処理し、分析の徹底化を図り、双方向からのアプローチの成果を融合させ、新たな意味理論研究の可能性を探究した。特にアリス作品のスモールコーパス利用による研究"Words-of-Strangeness in Alice's Adventures"では、スモールコーパス利用による文体論研究の更なる有効化の道を探った。作品をコンピュータで処理することで、これまで漠然としていた客観的な作品の姿を明示的に捉え、同時に文体論的なアプローチで、作者の作品へのこだわり方や読者への語り方を丹念に掘り起こして作品の心も捉え、双方向的に作品の全容を把握し、新たな意味理論研究、「ことば学」への道の開拓を試みた。その成果のひとつとして、台湾の国際学会で招聘講演を行った。
|