本年度においては、電子コーパスを利用した談話標識の文法化・語用論化研究に関して学会発表を2件行った。1件目は2005年4月23日に立命館大学において開催された第25回英語コーパス学会のシンポジウムで『コーパスと初期近代英語研究』というタイトルで発話動詞の文法化・語用論化について3種類のコーパスを用いて分析した。2件目は2005年12月10日に京都大学で開催された第8回日本語用論学会のシンポジウムで『初期近代英語における文法化:歴史語用論の観点から』というテーマで、近年盛んになってきた歴史語用論の立場から文法化を捉えることの可能性を指摘した。 また、本年度においては、歴史語用論の立場をふまえて、文法化理論だけではなく、発話動詞の主観化・間主観化についての考察を行った。Traugott(2003)では主観化のあとに間主観化が起こるという一方向性について言及しているが、発話動詞については必ずしもその通りではないことも明らかになった。談話標識のI sayにおいては、呼びかけ用法が17世紀ごろから発生し、話し手の感動を表す用法は20世紀からというごく最近の用法であることがわかった。しかし、間主観化については、もう少しほかの例も考察する必要があるので、18年度も継続して調査を行う予定である。 外国出張については、2005年8月に、イギリスのケンブリッジ大学に滞在し、主に大学図書館において、近代英語期の文学作品や文法化・談話標識の資料を収集することができた。さらには、コーパス関係の資料を入手することができ、12月の学会発表に利用することができたのは有益であった。
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