本年度の研究実績を次のようにまとめることができる。 1.先行研究では、他動詞には対格付与特性があり、前置詞には斜格付与特性があると考えられてしいる。動詞が補文標識無しの語彙主語不定詞節や小節を取る場合は、対格付与特性ではなく、斜格付与特性を持っていると考えることができる。そのように考えれば、先行研究で明らかになった様々な事実を統一的に説明することができる。すなわち、動詞補部の不定詞節や小節の主語位置にthat節や不定詞節が現れないという事実、前置詞の補部位置にthat節や不定詞節が現れないという事実、動詞補部の不定詞節や小節の主語位置に前置詞句が現れることができるという事実、前置詞の補部位置に前置詞句が現れることができるという事実を統一的に説明することができる。さらに、名詞類を取ることができない動詞が、補文標識無しの語彙主語不定詞節や小節を取ることができるという事実も説明することができる。 2.PRO主語不定詞節と補文標識無しの語彙主語不定詞節や小節の問には様々な相違があることが先行研究で明らかになっているが、それらの相違を先行研究とは別の方法で説明することができる。すなわち、PRO主語不定詞節が、補文標識for付き不定詞節やthat節同様、定形節の主語になり得ること、疑似分裂文の焦点になり得ること、虚辞itの連合要素になり得ること、補文標識無しの語彙主語不定詞節や小節が、補文標識that無しの定形節同様、定形節の主語にならないこと、疑似分裂文の焦点にならないこと、虚辞itの連合要素にならないことを、格を使って統一的に説明することができる。
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