井上(2008)は、井上・赤野(2007)におけるシノニム・語法記述の妥当性を検証する意味で、Bank of English(5億2千万語)に基づく研究成果と照合するものである。コーパス基盤的(corpus-based)な方法論とコーパス駆動的(corpus-driven)な方法論とはどういったものかを確認した後、(1)英語のsomethingが日本語の「何か」のように、未知・未定の内容だけでなく、名前など詳しいことを知らない場合はもちろん、それらにはふれずに漠然と物事を指す揚合にもしばしば用いられること、(2)可算名詞〔以降、(C)名詞〕と不可算名詞〔以降、(U)名詞〕を両極とする段階性についてふれ、(C)名詞と(U)名詞両方の性質をもつinterestを例に、「不定冠詞のほか、しばしば強意や量を表す形容詞を伴う」という性質に言及した後、greatやconsiderableなど程度を表す形容詞とともに用いられる場合は(U)名詞化が進み常に無冠詞だが、それ以外の形容詞を伴う場合、後にin句を伴うとより具体的な性質を表し(C)の性質が強くなり通例不定冠詞を伴うこと、(3)主格補語を従えるfallを取りあげ、become、get、go、tum、growなど、他にも主格補語をとる動詞はあるが、fall選択される際には、後に主語の意志に関わらないことを暗示する語句が続く傾向があること、(4)「すべて」の意を表す語とその範囲を明示するfrom...to...との間に高い共起可能性があること、などを指摘した。 これらの成果は、近く提出予定の井上(2008g)で詳しく発表する予定である。なお、本補助金による雑誌論文や図書の形をとっていないため次ページのリストには挙げていないが、本研究に関連する研究業績を以下に挙げておく。 井上永幸・赤野一郎編(2007)『ウィズダム英和辞典』第2版、三省堂。〔ISBN:4-385-10569・3、2144pp。〕 井上永幸(2008、予定)「コーパスに基づく英語シノニム・語法研究」〔科学研究費補助金(課題番号:16520298)〕。
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