研究概要 |
今年度は本研究のための資料収集を中心に行った。文系理系を問わず,関連学会に参加し,研究に少しでも関係ある話を聞き,関連書籍を購入し,研究をまとめるのに必要な知識を吸収した。来年度末までには本研究の最終結果を論文にまとめる。 本研究に使用する音声データには,標準形で言いよどみがないものと,非標準形で言いよどみが若干あるものが複合的に入っているものが音声学者間の表記の違いを知る上で適切であるとの判断から,15分程度のニュース番組(英音と米音)を選択した。複数の音声学者に依頼し,現在その結果を待っているところである。入試業務がすべて終了した3月末に,ロンドンに行き,ロンドン大学(UCL)の関連授業などにも参加し,研究に必要な知識の補強を行った。 現在のところ,研究協力者は予定より少ない。講義期間中は多忙な日々の連続であり,休暇中には執筆活動を行っている研究者が多く,協力を得ることは思ったより難しかった。データ量を少なくして依頼し直すことも現在考慮中だが,遅くても今年の夏までには研究データの収集は終了する予定である。研究協力を依頼した音声学者からの表記データが集まり次第,本格的な研究をスタートさせる。 本研究の関連研究として,今年度は日本音声学会で下降上昇調の現れ方を発表した。この音調には分離型と非分離型の二通りがあるが,「躊躇」の意味の場合は両方の型が来ることが知られているので,その意味を表す最適な指標である‘but'が続く場合の例を他の音声データから収集した結果を研究発表した。また,音調核音節の位置が1音節ずれたために,上昇下降調と下降調の頂点が同じ位置にあるこの二つの音調は,聴覚印象が近似するが,その音響的特長の違いを論文としてまとめ,東北大学言語学論集に投稿中である。
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