研究概要 |
研究に必要な全データがそろったのは,昨年末だった。協力をお願いした後,最終的に無理との回答を得たのが1年近くを経過したものもあり,急遽,別な研究者に依頼することもあった。途中で健康を害したため,早期のデータの送付が困難な研究者もいた。 本年度の入学業務が終了してから,集中的に研究を行い,その結果を論文としてまとめ,現在,東北大学言語学論集に投稿中である。この研究で使用したデータは,収集したデータの一部であり,全てのデータ分析は,夏休みまでは勤務の合間に,また,夏休みには集中的に行い,今年度中に最終結果を公表する。 2005年10月1日には,日本音声学会で,音節主音的子音と圧縮形という題で研究発表した。分節音の分野であるが,知覚の類似点と相違点という観点から,本研究を間接的に補強するものである。また,同年11月7日には,関西外国語大学主催の国際シンポジウム「音声学と英語教育」に参加し,3名の著名な英国音声学者の講義を聞いたり,直接質問したりして,本研究に関連する様々な情報を得た。 これまでの研究で分かった知見は,上記の論文に書いたが,研究に参加した英語母語話者の5名の音声学者の知覚の違いは予想以上に多かった。ただし,本研究で重要な観点は,明らかな間違いは除き,正しい解釈は一つだけではないということである。研究者の中には,唯一の解釈を求める人もいるが,筆者はそのような態度は取らない。人は理論通りに常に話すことはないし,人の知覚には不安定要因もある。こうしたことを念頭に,これまでの知見を検証したり,新たな発見を求めたりしながら,残りのデータを速やかに分析し,最終報告書をできる限り早く書き上げる。
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