研究概要 |
本年度は主に次の3点から研究を行った。第1点は、英語における日本語語彙の調査である。英語に借用された日本語の基礎的調査は拙著『英語のなかの日本語』においてほぼ完成した。しかし残された点もある。その1つとしてThe Shorter Oxford English Dictionaryの諸版における日本語語源の語彙の調査を実施した。この辞書はほぼ10年毎に改訂されているので、これにより20世紀における日本語語彙の借用の歴史を通観することができる。第2点は、本来語化の過程における翻訳借用語の問題に深く切り込むことができた。即ち、日本語と英語との接触点には「外来語、借用語」「日本語+英語の混成語」「Japan〜,Japanese〜の表現」「翻訳借用語」が横一線に存在することを明らかにした。しかし、それらは無関係に存在しているわかではなく、互いに関連しながら存在し時には他の形に移行することを指摘した。例えば、現在ではBlack StreamとKuroshiwoが共存するが時間を経てどちらかの表現が定着することとなる。第3点は、本来語化の4段階解明のための基礎作業として、英語辞書における日本語語彙の定義を詳細に点検し、意味の変化を調査した。特にオックスフォード系辞書を中心に、日本語語彙が英語に借用されるに際してどのように意味が拡大・縮小・転換・比喩的使用などを起こしているかを個々の語彙について調査した。この調査をもとに、より原理的なものを引き出したいと考えている。
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