研究課題/領域番号 |
16520307
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
有村 兼彬 甲南大学, 文学部, 教授 (70068146)
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研究分担者 |
大庭 幸男 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90108259)
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キーワード | 自由関係節 / 選択 / 併合(merge) / 投射 / 一致効果 / PRO / promise / 二重目的語構文 |
研究概要 |
まとめの年である平成17年度は、前年度の研究に続いて空範疇の働きを考察した。有村は、自由関係節(free relative clause)における空範疇の研究を行った。自由関係節はI bought what he sold.のような文であり、明示的な先行詞を持たないところが通常の関係詞(headed relative)とは異なる。また、通常の関係詞では先行詞が上位節の動詞の補語の働きをする(I tough the book which he sold.におけるthe book)。これに対して自由関係節においては、What he sold自体が上位節の動詞の選択に直接関わっていることになる。つまり関係代名詞(what)それ自体の範疇が関係節全体の範疇を決定しており、それが上位節と選択関係を結ぶという特徴がある。この特徴はBresnan and Grimshawで指摘されたことである(「一致効果」(matching effect)と言われる)が、問題はこの事実を現代の理論上どのように捉えるかである。有村は、Chomskyの考えをさらに敷衍して、関係代名詞が関係節の範疇を決定することもあると主張した。具体的には、関係代名詞をC投射に併合(merge)した時に、自由関係節の場合、併合された要素が投射する可能性があるということになる。そう考えることにより、これまでの理論によって必ずしも明確に捉えられなかった、関係節内の空範疇の特性も正しく捉えることができると主張した。 大庭は昨年度と同様に空範疇、特に、3項述語のpromiseの補文主語に現れる空範疇PROについて考察した。まず、広範囲の資料収集と多くの論文・著書を精読し、先行分析の理解に努めた。次に、当該の空範疇PROの解釈上の特異性(PROは最も近い名詞句しか指さないが、たとえばJohn promised Bill[PRO to leave].のPROはより遠い名詞句Johnを指すこと)について考察し、昨年度の研究分析を踏まえてこれに1つの説明を与えた。すなわち、promise構文は二重目的語構文と極めてよく似た統語的特徴をもつので、この構文の基底構造として二重目的語構文と類似した構造(John promised[[PRO to leave][p^'[pφ]Bill]].)を仮定すれば、空範疇PROは最も近いJohnを指し、この特異性は解決される。なお、この論文は現在、投稿準備中であるので本書類の研究発表の項目には入れていない。
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