本研究は、母語話者や第二言語話者による日本語の使用、学習という実践のあり方を「具体的な文脈に属する複数の人間、道具のやりとりのダイナミクス」として考察するのを目的とする。研究代表者の柳町智治(北海道大)は、日本語学習者による教室外での言語使用の実態を調査するために、まず理系大学院研究室と市内の飲食店において外国人留学生が日本語を使って母語話者と作業している場面のビデオデータをDVD化する作業を行った。さらに、このような実際の言語使用の場面における学習者と母語話者、あるいはそれらの参加者と人工物の間のインタラクションがどのように実践を組織化しているのか質的でマイクロな分析を行った。その考察は、2005年秋に刊行予定の共著書『第二言語学習への状況論的アプローチ(仮)』で発表されることになっている。 研究協力者の岡田みさを(藤女子大)は、日本語学習者の言語使用分析のベースラインとなる母語話者による日本語使用のデータの分析をすすめた。今年度は特に、ボクシングジムで女性トレーナーが指導を行っている場面と地域の婦人バレーボールチームの練習場面をビデオに収録し、データベースに追加する作業を行った。岡田は、これらのデータをもとに、母語話者によるいわゆる「女性語」使用の実想を従来の社会言語学における研究のように話者の性という属性から見るのではなく、会話における「アクティビティ」との関連から分析し考察した。この結果はOkada(2004)、岡田(2005)として発表されている。
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