本課題は、母語話者や第二言語話者による日本語の使用、学習という実践のあり方を「具体的な文脈に属する複数の人間、道具のやりとりのダイナミクス」として考察するのを目的とする。研究代表者の柳町智治(北海道大)は、日本語学習者による教室外での言語使用の実態を調査するために、理系大学院研究室において外国人留学生が日本語を使って母語話者と作業している場面のビデオデータを分析する作業を継続した。また、入門フランス語クラスでのフィールド調査のデータを整理分析し、「教室における知識・情報のネットワーク」という観点から、学会発表と論文執筆を行った。以上2編の考察は、2006年春〜夏に刊行予定の共著書『第二言語学習への状況論的アプローチ(仮)』に掲載予定である。 研究協力者の岡田みさを(藤女子大)は、母語話者による日本語使用のデータの分析を継続して行った。ボクシングジムで女性トレーナーが指導を行っている場面のビデオデータの分析をもとに、2005年8月に米国ウィスコンシン州で開催された応用言語学の世界大会において「言語とジェンダー」の観点から口頭発表を行った。この研究成果は、2006年中に国際的学術雑誌『Language in Society』誌に掲載の予定である。また、前年より継続されていた、母語話者による終助詞「ね」の使用に関する考察は、前出の『第二言語学習への状況論的アプローチ(仮)』の一章として掲載される予定である。
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