研究概要 |
本研究の目的は,日本語母語話者や非母語話者(英語,中国語,韓国語の母語話者)がアニメーションのストーリーについて日本語で語る談話や文章をデータとして取り上げ,ストーリーの内容的なまとまりと関連する助詞の「は」,主観的表現,節のくりかえしという3つの表現の使われ方について分析すること,そして談話における「話段」が,どのような手がかりで認識されるのかについての調査・考察を行うことである。 「は」の使われ方に関する母語話者データの分析では,書きことばにおいて話しことばよりも約2倍「は」が使われていること,「は」の使われ方には,トピックの継続性だけではなく有生性もその要因になっていることが明らかになった。 文章データに現れる主観的な表現の使われ方について,日本語母語話者の場合は,事態が予想外であることを示す「てしまう」が冒頭部や展開部で高い頻度で用いられるが,ストーリーの終結分では使われなかったのに対し,非母語話者の場合は,終結部でも用いられていたこと,などが指摘された。 同一話者によって同一命題が隣接してくりかえされる現象と定義される節のくりかえしについては,南(1974,1993)の階層モデルをもとに,1)統語的には,先行する節はそれより前の文脈と結びつき,後続する節はそれより後ろの文脈に結びついていること,2)その反映としてくりかえされる命題は意味的に異なる2つの談話のまとまりに属していること,などが明らかになった。 「話段」については,内容区分調査の結果,1)新しい内容が始まると指摘された発話の70%は,全体の15%に過ぎない有生の名詞句と接続表現の両方を含む発話であったこと,2)指示表現と接続表現を組み合わせが「話段」認定の重要な基準になっているということが明らかになった。
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