2004年度には、日本語初級、中級、上級(前半)のレベルの学生が3種類の文章を読む際の視線の動きを、記録し、分析を行った。現在も分析を継続して行っている。分析によると、主語等の省略が含まれる文を読む場合とそうでない場合とでは、読解時間に差が見られる。被験者の数がまだ少ないため、統計的分析はしていない。また、読解後、文章の内容について実験者が学生に対し、質問をしているが、課題の内容によって読み方が異なることがわかった。現在、分析の際にはビデオ画面上の眼球運動の軌跡をフレームごとに記録しているが、そのためにかかる時間が大変長く、分析に要する時間が研究を進める上で一つの問題となっている。来年度以降、より解析しやすいデータを得るための機器利用、接続をすることが課題の1つである。 また、日本語における省略の問題に関し、認知心理学や日本語学などの分野での文献を収集した。「省略」は談話の流れの中で起こるため、指示詞や接続詞の問題とも関係している。また、一つ一つの語がカバーする意味の広がりや、文化概念あるいはスキーマとのつながりのもとで考える必要があろう。現在、省略箇所を含む文章の処理を支援する読解教材を試作、試用、改良している。 さらに、これまでに作成した学習者の個々の言語要素結びつけ処理短縮練習教材を使用し、教材の整備、改良を行っている。中級レベルの重要だと思われる語彙等、言語要素同士を結びつけた処理を自動化するための教材については、印刷教材として授業で行う場合と、自習用教材としてコンピュータ上にのせて、インターネットでの使用をする場合と2種の使用が可能になるようにしている。自習用コンピュータ教材については、学生に対し提供できる正答についての情報がまだ少なく、次年度以降の課題である。
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