研究課題
2006年度には以下の点を中心に、研究を実施した。1.日本語学習者71名に対し、意味的に関連する語や言語要素を結びつけて処理する教材を利用し、語の活性化を促し、読解技能に役立つよう方向付けた。その際に、(1)本練習が果たす役割を明らかにすること、(2)学習者の処理の実態の把握、の目的で、学習者による語の結びつけの傾向を調べた。読解クラス担当教師8名が各クラスの学習者の解答傾向を記録し、研究実施者(研究代表者)がその結果をまとめ、検討した。得られた主な結果は次の通りである。・学習者が誤答をする際の原因を、学習者による語の結びつけの傾向から調べた。学習者は対象語の処理の中で、既習の類義語の意味に影響された処理や、対象語あるいは結びつけ語と同じ漢字を使用する既習語の意味をもとにした処理(例 学習対象語「昨夜」-(夕べ)-誤った結びつき語「夕焼け」、学習対象語「戒めて」-(落ち着いて)-誤った結びつき語「平気で」)を行っていることがしばしばあり、それがもとで語の適切な処理が行われないことがある。さらに、「する動詞」の意味把握に問題が見られる例として、動詞のヴォイスの取り違いが挙げられる。・読解試験の得点の上位群、下位群に分けて、結果を検討したところ、上位群は誤答数と誤答の散らばりが少ないこと、上位群で誤答が多い項目は、下位群も誤答が多くなる傾向が見られた。2.アイカメラを使用し、未知語が文章中に2回以上提示される文章を使用して、学習者がどのように文章を読み進むか、実験により調べた。実験の結果、未知語について、初出の時には、意味処理に長い時間がかかるが、同一未知語について2回目以降の処理には、初出に要した時間の約3分の1の時間で処理をしていることがわかった。また、文章を理解できた学習者は、文章読解の際、2回目の読みで、主にキーワードのみを追う読みをしている結果となった。さらに、学習者の文章読解時間と理解度の分析から、文章中に省略が含まれる箇所で必ずしも読み時間が長くなるのではなく、語及び文章の理解度(読みのコントロール可能度)、読み時間との関連で、注視位置と逆行(戻り読み)を明らかにすることの重要性が認められた。
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東京外国語大学留学生日本語教育センター論集 第33号
ページ: 129-137
Proceedings of CLaSIC 2006 : The Second CLS International Conference : The Processes and Process-Orientation in Foreign Language Teaching and Learning
ページ: 1056-1064