本研究は言語学習の効果に影響を及ぼす要因として、「言語不安」に着目する。言語不安の状況を適切にコントロールすることで、言語学習の効果を高められることが期待される。今年度はベトナムと中国の大学の日本語学習者を対象に行ったe-Learningを用いた日本語授業を行った。e-Learningを用いた理由は、前述した言語不安を生み出す要因となりうる対人不安やコミュニケーション不安を軽減できる可能性があるからである。また、e-Learningでは、不安傾向が異なる学習者ごとに、同じ状況で同じ間違いをした場合でも、フィードバックを変えることができるだけでなく、学習者がどこからアクセスしても、学習者の傾向を教師が一元管理することができ、それを教室活動での指導に反映できるという利点がある。 言語不安と成績によって4つのタイプに分類し、それぞれのタイプの学習者の傾向を見た。e-Learning教材に対する学習傾向は、不安低・成績低群の学生はアクセスが非常に少なく、不安高・成績高の学生はアクセスが非常に多かった。事後調査の結果では、すべてのタイプの学習者がe-Learningによる学習活動は役に立つ、楽しいと評価している。自由記述でも、掲示板で外国の日本語学習者の意見を読んだり書いたりすることは役に立つ、おもしろいという意見が多かった。今年度は・不安をコントロールし、学習を促進するためのタイプ別フィードバックを学習者全員に送信したが・フィードバックの回数が少なく、フィードバックの文言があいまいだったため、学生に意図が伝わっておらず、したがって16年度の実験授業では不安をコントロールすることで学習の成果を上げることができるという仮説は確かめることができなかった。17年度はフィードバックの回数を増やし、実験群と統制群それぞれの不安の変化と学習効果を検証する予定である。
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