平成16年度に行った調査研究では、学習者を1.日本語力が高く、日本語不安の低い学習者、2.日本語力が高く、日本語不安の高い学習者、3.日本語力が低く、日本語不安の低い学習者、4.日本語力が低く、日本語不安の高い学習者の4タイプに分けて、それぞれのタイプの学習者がe-Learning教材及び大学の授業に取り組む際にどのような違いがあるかを観察した。e-Learning教材に対する学習傾向は、不安低・成績低群の学生はアクセスが非常に少なく、不安高・成績高の学生はアクセスが非常に多かった。事後調査の結果では、すべてのタイプの学習者がe-Learningによる学習活動は役に立つ、楽しいと評価している。しかし、日本語力の低い学習者ほど教材へのアクセス数が少なく、自律的にe-Learning学習を進めるのは困難である。このような学習者に対しては、定期的なフィードバックが学習の継続には不可欠であると考えられた。 これらの成果をふまえて、平成17年度には日本における学部留学生に対して、定期的なフィードバックを与えて不安と学習態度の変化を観察した。実験授業は口頭表現のクラス及び、専門語彙と読解の2クラスで行った。実験群と統制群の2群に分け、実験群に対してのみ、不安の高低によってフィードバックの文言を変えてe-Learningと対面授業における口頭表現能力を高める授業を行った。その結果、両クラスともに、不安を軽減するフィードバックを与えた群の学習者は、「励まされたからがんばる」という反応を示し、不安は時を追うにつれて軽減した。また、e-Learning学習に対して積極的に取り組み、話す、書くというアウトプット行動に関する自己評価も高まった。それに対して、不安を高めるメッセージを与えられた学習者は反発と不安を感じるという反応を示す一方、e-Learningに対するアクセスは増加し学習が促進された。
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