研究課題
基盤研究(C)
日本語教育の協働的学習の授業実践について、授業録画、参与観察、質問紙調査、授業後インタビュー、クイズなどを用いて、認知・情意の両面から検討を行った。その結果、認知的側面では、読み手である学習者が他者の発話をヒントに自らの理解を再吟味し、当初の仮説を変更したり、より精緻化させたりしていることが明らかになった。一方、情意的側面からは、課題が難しくなると不安が高まり、動機づけや自尊感情は低下する傾向が見られること、協働的学習活動の成否にはグループ内の明るさ、活発さ、連帯感、責任感などが関与していることなどが明らかになった。また、認知面と情意面と協働的学習活動は互いに連関しており、協働的学習活動が成功しているグループはこれらがよい循環をなしていることがわかった。そして、このような好循環を形成するには、学習活動への参加を促す動機づけが重要であることが示唆された。この「参加の動機づけ」には「わかったことを話したい」「皆の話を聞いてもっとわかりたい」といった認知的な動機づけと、「楽しいから話したい」「話すことによってもっと楽しくなりたい」といった情意的な動機づけがあるのではないかと考えた。本プロジェクトの初期段階では、認知面と情意面を独立して扱い、両者の関係について探ろうとしていたが、観察を重ねるうちに、両者は単独に存在するものではなく実際は関連しあっているものであるということが明らかになった。従来の研究がどちらかというと、認知面あるいは情意面だけを焦点化して扱っていたことが多かったのに対し、本研究ではそれを統合しようとしたところに意義があるといえよう。また、「動機づけ」というと、情意的なものと考えられてきたが、協働的学習活動への参加を動機づける「参加の動機づけ」には、認知的要素と情意的要素が深く結びついているという観点を提示したことも本研究の成果だといえよう。
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