研究概要 |
「ゆとり教育」を目指した学習指導要領の改訂の結果、「英語語彙数の不足」とその「低い定着率」が問題となっている。その解決策として本研究課題では、小学校から始まる英語活動に関して、中学校の英語学習と有機的に連動させる語彙指導の体系を提案し、検証した。今年度の研究の大きな柱には1)「日本人小学生のための日常生活語彙」の選定、2)「中学校重要語彙」習得のためのCALL教材の開発と試用実験があった。 1)「小学生のための日常生活語彙」の選定 今年度の成果として、我が国で初めて、客観的指標に基づき日本人小学生のための日常生活語彙を選定し、国内外の学会で発表した。語彙選定はa)「海外・国内英語絵辞書」30冊を分析して得られた5,259語の異なり語からなる「英語絵辞書の語彙リスト」と、b)129万語の「子供話し言葉コーパス」と1千万語の「BNC(大人)話し言葉コーパス」の統計的な比較から得られた「子供話し言葉に特徴的な語彙」の両者を統合して行った。さらにBasic Elementary Reading Vocabularies (Harris & Jacobson, 1972)とThe Living Word Vocabulary (Dale & O'Rourke, 1981)を参照し、当該語彙の指導学年の資料を付与した500語からなる「小学生のための日常生活語彙リスト」を作成した。その後、小学生にこれらの語彙を指導するためのCALL教材のプロトタイプを提案した。 2)「中学校重要語彙」習得のためのCALL教材の開発 昨年度は「中学校重要語彙」の選定を行い、その後「中学校重要語彙」学習用のCALL教材の試作機を作成した。昨年度の成果を引き継ぎ今年度は、1)小学校での学習が想定される上述の「日常生活語彙」との重なりに配慮し、さらに生徒の発達段階を考慮にいれて「中学校重要語彙」を学習しやすいように分類、配列した、2)昨年度のCALLの試用実践から明らかになった問題点を解決するため、改良を加え、中学生が楽しく、単語の意味、発音、綴り、用例を総合的に習得できるCALL教材を開発した。開発された教材は実際に中学校の英語選択授業で活用され、中学生の語彙力養成の補助教材となっている。
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