研究課題/領域番号 |
16520343
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小林 ひろ江 広島大学, 大学院総合科学研究科, 教授 (50205481)
|
研究分担者 |
リナート キャロル 広島市立大学, 国際学研究科, 教授 (20195390)
|
キーワード | 修辞的特徴 / 議論文 / 海外留学経験 / 英語ライティング / 日本語ライティング / テクスト構築 / 反論 / 序論 |
研究概要 |
18年度は、研究計画に従って帰国子女(海外での高等学校留学経験者)に関するデータ(作文、作文プロセスのビデオ、インタビュー)を収集する一方、イギリス/アイルランド応用言語学会にて16&17年度に実施した研究の発表を行った。まずはデータ収集であるが、先攻研究(14年度〜15年度)の大学1年生と比較するために、海外の高校を卒業または勉強した経験のある大学1年生8名よりデータを収集した。しかし被験者の数をさらに増やすため、19年度入学予定の新1年生(3名が帰国子女経験者)を加えたい。このためしばらく研究を継続する予定である。 研究発表については、以下のタイトル"Transferability of argumentative writing competence from L2 to L1 : Effects of overseas experience"にて発表した。この発表をまとめた論文はBritish Studies in Applied Linguisticsのジャーナルに採択され、掲載されることが決定している。この研究では、海外での英語ライティング経験が日本語による文章構築(特に議論文)にどのような影響を与えるかを精査するため、海外経験の有無と滞在期間の長さに基づき被験者25名を3つのグループ((1)海外経験なし、10名;(2)1年間の海外留学経験者、10名;(3)2年間以上の海外経験者、5名)に分け、日本語・英語小論文、インタビュー・データを詳細に比較分析した。 以下は主な結果と考察である。(1)主張に対立する反論/反駁の説明がグループ(2)の日本語文のうち60%に見られた。非海外経験者グループ(1)と比べると2倍の多さであり、これは英語ライティングで得た知識をL1へ転移させた結果と考えられる。一方、英語文では30%しか使っておらず、これは反論の構築がL2では難しいことも示している。(2)「序論」に関し、グループ(1)と(2)が背景知識と自分の主張を言及するだけであるのに対し、グループ(3)はキーワードを定義し、争点を明確にする傾向を日英語文の両方で示している。海外での専門教育と研究レポートの影響が日本語文に転移されていると考えられる。(3)日本語文の「結論」では、非海外経験者が将来への展望を述べているのに対し、海外経験者グループは本論の要旨が主であった。これは英語ライティングの結論の書き方の影響であろう。これらの結果によって本研究ではL2ライティング経験がL1ライティングに影響を与えることを明らかにしたが、同時に、英語と日本語による議論文では類似点ばかりでなく相違点もあることも示した。
|