研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、「言語間のライティング能力の双向性」について、特に、英語ライティング訓練/経験(L2)の日本語ライティング(L1)への影響を精査することであった。本研究は英語圏の大学への留学経験のある学生と経験のない学生との比較(被験者は大学34年生と社会人の計26名)、海外にて高校教育を受けた学生と受けていない学生との比較(被験者は大学1年生、19名)、の二つのリサーチを行った。データ収集と分析は基本的には先行研究(小林・リナート、科学研究成果報告書、2004年)と同様であるが、今回は「作文評価」も導入した。最初の研究では、海外留学経験者による日本語議論文には以下のようなテキストの特徴がL2からL1へ転移されていた:1)議論には賛成意見のみでなく反論と反駁の記述、2)導入段落(introduction)では何が問題であるのかissueを明確化、3)結論は、日本語的結論の特徴を控える傾向(例えば、将来の展望のを含まない)。また高い評価を得たL2議論文は導入段落と英語力と高い相関を示した。次の研究では、帰国生によるL1とL2作文の両方に共通するテキストの特徴として説明文より議論文の選択、パラグラフに基づいた明瞭な文構成や反論/反駁の導入が頻繁にみられた。これはL2で習得した英語ライティングの書き方を日本語に転移したと考えられる。また評価では、英語力と英語作文力が非常に優れており、日本語作文力に関しては高校で教育を受けた学生と比較しても違いは見られなかった。帰国生の場合、L1とL2ライティングは高い相関を示した。これらの結果とインタビューの分析を基に、どのような要因によって言語間におけるディスコースの特徴の転移が可能になるのか、そのモデルを提案した:1)L1とL2ライティング訓練/経験の内容と量(メタ知識とスキーマ化に関連),2)英語力、3)専門領域での高度な訓練、4)個人の内的要因(動機や態度)。これらの要因が個人のテキスト構築に大きな役割を果たしていることを明らかにした。
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Journal of Second Language Writing 17-1(印刷中)
Journal of Second Language Writing (in press)
ページ: 17-1
From applied linguistics to linguistics applied:Issues, practices, trends
ページ: 91-110
Hiroshima Journal of International Studies 13
ページ: 65-92
Linguistics
Hiroshima Journal of International Studies(Faculty of International Studies, Hiroshima City : University) 13