幕末から明治期にかけて、日本の村社会において作成されてきた、庶民の日記史料を主たる研究対象として、今年度も引続き、(1)既刊日記史料の記述年代に関する調査、(2)既刊重要日記史料の収集、(3)未刊日記史料の収集と解読、(4)収集筆記日記史料の原文照合・点検・割付とその入力、(5)入力日記史料(「全文テキスト」)からの歴史情報抽出と論文作成、のそれぞれについて研究を進めてきた。(1)既刊日記史料については日常的に収集を蓄積しているが、今年度は長野県関係の筆記・入力史料との関連で長野県立図書館において刊行日記史料の調査を行った。(2)既刊重要日記史料の収集としては、九州地方の「草場船山日記」「吉田家家事日記」「海陸道順達日記」、四国の「岩崎弥太郎日記」、関東の「高橋景作日記」などを購入することができた。(3)未刊日記史料の収集と解読に関しては、昨年に引続いて「古橋家日記」を取り上げ、明治初年分の難読部分の再検討ならびに筆写原稿の整理・割付を行い、また日記と密接に関連する書簡の収集と解読を手がけている。昨年集中して収集・解読を進めてきた上層農民の日記-長野県東筑摩郡麻績村の「葦沢家日記」についても、コピーをもとに解読を進め、入力を始めて「全文テキスト」化の段階に入った。(5)「全文テキスト」からキーワード検索による歴史情報抽出結果については、二つの論考を発表した。一つは「幕末維新期の日記史料-出羽国秋田院内銀山町「門屋養安日記」の場合-」(『立正史学』100号)であり、一つは日記関連の論考で「幕末期中部地方の地域情報」(『立正大学人文科学研究所年報』別冊16号)である。
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