今年度は本研究の最終年にあたり、本科学研究費補助金により、新潟県佐渡市小木図書館、山形県鶴岡市郷土資料館、函館市立中央図書館、北海道立文書館、青森県立図書館、等への現地史料調査を実施した。 佐渡市小木図書館への調査では、活字史料として『佐渡小木町史』および『赤泊町史』に良質な海運関係史料が収録されていることを確認した。あわせて、船大工の集住した宿根木集落や安政5(1858)年に建造された幸栄丸512石の実物大復元船を実見し、海運で賑わう佐渡の様子を窺うことができた。また、相川の佐渡奉行所跡では佐渡金山の精錬用に越後村上藩から移入された鉛の塊が発掘されており、地域間に展開した産業市場の一端を垣間見ることができた。鶴岡市郷土資料館は一昨年に続く再訪で、今回は加茂湊の廻船問屋長沢家文書と大山村の蔵元羽根田家文書を中心に写真撮影によって史料を入手した。庄内の酒は越後酒と並んで積極的に蝦夷地へ廻漕されていることが本研究により解明されつつあり、入手史料の解析が期待される。そして、函館市立中央図書館、北海道立文書館、青森県立図書館は何れも2度目の調査で、的を絞った史料調査をすることができた。その中から、享和2(1802)年の「蝦夷地御会所送り状控」と慶応2(1866)年の「函館沖之口係諸向達懸合綴込」を選び、研究成果報告書(冊子体)に翻刻・紹介することにした。ともに蝦夷地への移出入の実際を知ることができる貴重な史料である。また、青森湊の廻船問屋伊藤善五郎家文書(瀧屋文書)は、雄松堂の「近世の廻漕史料」としてマイクロフィルムで見ることができるが、その一部が昭和30年代に刊行された『青森市史』に収録されている。今回の調査では、その収録分を中心に確認作業をおこなった。 また、前年度に続きマイクロフィルム「近世の廻漕史料」の一部10リールほどを購入した。今後の研究につなげる意味で、自ら撮影した収集史料とあわせてこれら史料群の分析作業を継続したい。
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