本年度の研究課題「II 幕末期地域社会の政治的経済的文化的ヘゲモニーの関係構造に関する研究」を以下の(1)〜(4)の柱をたてて実施した。 (1)大規模豪農-中小豪農の間の諸ヘゲモニー関係に関する研究 羽州村山郡の大規模豪農のうち、堀米家・柏倉家(本家)を対象に研究を実施した。両家よりそれぞれ金融支援を受けながら商業取引や村役人として活動を担った宇野家・柏倉家(分家)の古文書調査も実施し、大規模豪農-中小豪農の間の機能分担=共生関係およびそれによる地域秩序の掌握・再編の動向に関する検証を進めた。 (2)大規模豪農と地域社会の宗教民俗文化動向との関係に関する研究 堀米家を事例に研究を実施した。谷地郷沢畑地域の契約講や伊勢講文書を発見し調査をおこない、堀米家が各講組織の整備をしその宗教民俗文化へ関与した実態を解明した。 (3)幕末期地域社会の政治動向に関する実証的研究 堀米家を事例に研究をおこなった。農兵取立および戊辰戦争前後の堀米家の政治活動に関して、地域社会および仙台との関係を視野に入れながら関係新史料の調査を実施した。 (4)近世後期〜幕末期における全国紅花市場の変動に関する研究 幕末期の基礎過程の分析のために、全国紅花市場の拡大・変質に関する調査研究を進めた。京都紅花問屋最上屋文書(京都府立総合資料館蔵)・大坂商家文書(大阪商業大学蔵)・奥州村田紅花商人大沼家文書(同家蔵)・秋田那波家文書(秋田市立図書館蔵)・水戸紅花商人羽部家文書(同家蔵)などの調査をおこなった。 そのために、旅費および謝金(調査撮影補助)を中心に補助金を使用した。
|