本研究は、自然と人間の関係史、とりわけ災害をめぐる地域社会の対応を探る一環として、木曽三川流域に展開した治水事業と地域社会の関係について検討を行うものである。 本年度は、昨年度対象とした18世紀中期も含め、さらに18世紀後半を視野に入れながら、木曽三川流域の災害情報及び地域動向について、高木三家をはじめとする古文書・古絵図の調査とデータ構築・解析を行った。調査対象とした主な史料群は、石河家文書・東高木家文書(徳川林政史研究所)、西高木家文書(名古屋大学)、同(上石津町教育委員会)、同(個人)、笠松陣屋堤方役所文書(岐阜県歴史資料館)、東高木家文書(個人)、立木家文書(個人)、北高木家文書(個人)、日比家文書(名古屋大学)などである。 データ解析においては、災害そのもの実態はもとより、災害復興過程、災害予防措置等を通してみられる地域間利害の調整や共同性調達、また自然観察から生み出される治水技術の蓄積とそれに基づく地域からの意見具申など、災害と地域社会の関係性を重点的に追及してきた。 特に、養老断層に接した扇状地における土石流災害に関して集中調査を行い、17世紀末から幕末・維新期までを見通す形でデータ収集・解析を行った結果、災害対応を通した地域社会の変貌が浮かび上がってきた。 次年度は、これらの蓄積・成果にたちつつ、災害と対峙する地域社会の特質、近世中・後期における災害文化について明らかにしたいと考えている。
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