研究概要 |
2005年度には、以下の1,2,3の研究実績をあげることが出来た。 1 戦時における地方純潔運動に関する論文「軍需工場地帯における純潔運動-群馬県を中心として-」を、原朗・山崎志郎偏『戦時日本の経済再編成』(日本経済評論社、2006年3月31日刊行)に掲載することができた。この論文では、軍需工場地帯となった群馬県において顕著であった青少年工や徴用工の欠勤や不良化、享楽化、闇取引や軍需工場がらみの経済犯罪に対抗して行われた、同県社会事業家らによる純潔運動の展開を明らかにした。先行研究で、戦時純潔運動が国策と一体化し、優生学的傾向を強めたことが大雑把に指摘されているのとは異なり、本稿では、同運動が軍部の享楽に対する批判や統制経済の指導者批判、人口政策批判を鋭く展開していたことを明らかにした。本稿をふまえて来年度は、これまでの拙稿をまとめた著書を発表する予定である。 2 「烏山遊郭史料」の「遊客人名簿」(大正8、9年)のデータベース化をすすめ、約800件ほどの入力を終えている。同遊廓の遊客に関する諸事実が発覚しつつある。 3 戦後沖縄におけるAサインバー・ホステス経験者に対する聞き取りを、数年前から行っているが、その成果の一端を執筆し、「戦後沖縄におけるAサインバー・ホステスのライフ・ヒストリー」という論文にまとめ、『琉球大学法文学部紀要 日本東洋文化論集』12号、2006年3月)に掲載した。この論文では、沖縄本島北部出身のある女性からの聞き取りに基づき、米軍統治時代末期の沖縄における米兵向け水商売で働いた女性従業員の労働、賃金、労働意識、暮らし、生い立ち、人物像等を明らかにした。1960年代末の米兵向け水商売では、前借金などから相対的に自由なホステスも存在していたこと、借金をしないで労働する道が必死で模索されていたこと、そのことに対するプライドが息づいていたこと、本土での進学・労働体験の持つ意味の重要性、などが浮かび上がってきた。このテーマについては今後も追究・執筆していく予定である。
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