本研究は、大正から昭和初期の『台湾民報』掲載のフェミニズム関係記事の収集分析を行うとともに、林献堂ならびに彼を取りまく人びとと、国際的に活躍したジャーナリスト北村兼子との思想的交流について解明することを目的とした。 『台湾民報』掲載のフェミニズム関係資料の分析は、研究代表者の大谷を中心に進め、収集記事のパソコン入力作業を完成した。この間に、林献堂・彭華英・蔡阿信に関する収集資料を分析するとともに、『台湾青年』『台湾』誌上のフェミニズム関係記事、および『台湾民報』紙上の民族的論調記事も収集し検討した。 その結果『台湾民報』のフェミニズム関係記事が台湾民族運動と切り離せない重要な意味をもつことを解明することができ、同時に1920年前後に日本の大学や専門学校に学んだ台湾の人びと、とくに蔡阿信、彭華英らの思想および心情の軌跡を跡付けることができた。 平成17年8月には、当初の研究計画にそって台北・台中・台南・高雄において追加調査を行った。台南市立図書館・台中市文化中心・国家国書館・台湾大学図書館での資料収集と、高雄・台南・台中での実地調査によって、1930年に婦人文化講演会講師として北村とともに台湾を訪ねた生田花世・林芙美子・山田やす子・望月百合子・堀江かどえらの思想と動静を明確化することができた。 以上の成果は、『関西大学文学論集』第55巻第3号(平成17年12月)に「北村兼子と台湾」として発表した。研究分担者の石月は、「知識人女性の台湾訪問と台湾認識」を『桜花学園大学研究紀要』第8号(平成18年3月)に発表している。 平成17年12月以降は、研究成果報告書の作成を進め、研究代表者大谷の「北村兼子と林献堂」、「北村兼子と台湾」、「『台湾民報』掲載のフェミニズム関係記事」、および研究分担者石月の「『婦人毎日新聞』に関する調査報告」、「知識人女性の台湾訪問と台湾認識」を収録した。
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